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数年前に市内で引っ越した際、最初の引っ越し先第一候補の家は
回りに猫が多数生息し、糞尿の臭気が立ち込めていたため、
区内の別の候補地に転居しました。その後他の方が転入されたのかは
わかりませんが、第一候補の家主は経済的には一定の利益を逸した
ことになります。
野良猫の問題は、市民に対して損害を与え続けている事実を
軽視するべきではありません。手術しても糞尿が無くなる訳では
ありません。
動愛管理法に基づく所有者不明猫の引取りは
「生活環境の保全への支障の防止」が目的です。
(動愛管理法第1条、環境省通知)
「愛護のため」でもなく「被害の回復のため」でもなく、
未然防止のために一律に引取り対象としているのですから、
現に被害が発生していることやその可能性の証明も必要ありません。
「そして飼い主のいる猫が持ち込まれた場合は35条1による
引き取り対応をし、飼い主のいない猫が持ち込まれた場合は付帯決議8
による引き取り対応をし、飼い主がいるのかいないのか判らない猫が
持ち込まれた場合は35条3による引き取り対応をする。」
との意見が書かれていますが、拾得等された猫の引取りの求めがあった時点
で「飼い主がいない猫」と「飼い主がいるのかいないのかわからない猫」
の区別は困難です。その時点で飼い主がいない事の証明は不可能だからです。
拾得者が飼い主の有無を調べる義務もありません。
即ち、拾得等された「所有者の判明しない猫」とは、例えば
(1)所有の意思がある者が存在し、そこから逃げた猫だがその飼い主が
明示されていないため誰だかわからない猫
(2)所有の意思がある者が存在したが所有権を放棄した猫で元の所有者
が明示されていないため誰だかわからない猫
(3)元々所有者が存在しない猫であるため所有者を確認しようとしても
わからない猫
(1)(2)(3)全てが対象になります。これらは条文の定義から当然の
ことなので「根拠」は必要ありません。(2)については、遺棄罪の
捜査の対象となる可能性は否定できませんが、引取り規定にはそれを
理由に除外できる規定が付されていません。
例え首輪をしていても飼い主が誰だかわからないのであれば引取りの対象です。
「駆除目的で捕獲された飼い主のいない猫」を含めるというのは、
法律の条文から明白であり、(捕獲した猫に飼い主がいない事は証明できない)
かつ引取り規定の目的(生活環境の保全への支障の防止)にも沿った
ものですから、それ以上何の根拠の必要性も感じられません。
それ以上「根拠」を求めるのは単なる日本語の読解力
の問題であって説明のしようがありません。逆に、条文をどう解釈したら
「駆除目的で捕獲された飼い主のいない猫」を含めないと読む余地がある
のでしょうか?
拾得等された猫のうち所有者が明示されている猫のみが、引取りの対象外です。
住民はその所有者に対し
「被害防止措置を求める」「被害発生時には賠償を求める」という
自己救済手段があるため、行政側の助けがなくても解決することが
可能だからです。
市民が生活を守るために所有者不明猫を捕獲し引き取ってもらうことは、
動物保護管理法ができて以来、禁止されていないどころか、
法律の目的上の措置として位置付けられています。そもそも法に定められた
措置を行うための手段を一律に禁止する事は法律上おかしな話です。
捕獲する際に、捕獲に必要な程度を超えて殊更に痛めつけるような
ことがあれば虐待の可能性がありますが、
「引取りのために捕獲すること自体は虐待ではない」
という当たり前の見解もわざわざ改めて環境省から出されています。
ただし、引取りは積極的に件数を増やすべき取組みではなく、
犯罪が無くなれば犯罪捜査は必要なくなるのと同じく、引取り対象と
なる猫が存在しなくなれば引取りは必要なくなる、という位置づけです。
そのために、屋内飼育や避妊手術が奨励されているのです。
それでも、野良猫による被害の問題が存在する限り、市民の権利は
守らねばならず、引取りは法律に基づく義務であり、引き取らないのは
行政の怠慢です。110番しても警察が出動を拒否するようなものです。
野良猫に生きる権利があると主張するのは自由です。でもそれは
日本の法治の中で認められた権利ではなく、個人の見解であって
他人に強要したり市民の権利を制限する根拠にはなりません。
(動物虐待が禁止されているのは動物に権利があるからでは
ありません)
法律は従わなければいけない義務ですが、附帯決議は国会から政府
への「要望」です。附帯決議を理由に法の義務に従わなければそれは違法
行為です。環境省は6月17日付け事務連絡で「考慮」を求めていますが、
いくら考慮したところで法律を覆すことはできません。
考慮した結果として引き取り拒否は不可能と判断するしか選択枝はありません。
ちなみに6月17日事務連絡は、愛護団体の方が環境省を訪れて何時間も
面談し、議員の口利きもあってやむを得ず環境省が出したものであると
もっぱらの噂です。それ以上役所に対して違法行為を要求すれば、不当要求にも
なりかねません。それによって他の市民の生活の権利を脅かす、そのような行為に
議員は加勢されるのでしょうか。
なお、条例で所有者不明猫の引取り拒否を定めることは、法律に
反するので無効な条例となります。
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